ここへ来て、緊急事態宣言が延長されることになり、新規感染者数は減少しているものの、入院者数や重症者数があまり減っていないというニュースに接し、大変胸がいたみます。

音楽の現場も、依然厳しい環境下に置かれています。入場制限や検温・換気等、感染拡大防止対策に神経をとがらせながら、演奏会を運営されている方もいらっしゃることでしょう。あるいは、種々の条件もあってキャンセルや延期の対応 ― 払い戻し業務やチラシの刷り直し等その事務量たるや膨大 ― に追われている方もいらっしゃるかもしれません。本当に、一日も早く、誰もが屈託なく音楽を共有することのできる日々が到来することを祈るばかりです。

長びく逆風に耐えながらも、私どもも少しでも前に進まなければ、ということで、日々活動を続けておりまして、以前お知らせしていた配信コンサートですが、既に弊サロンでの収録も終わり、配信用映像のチェックも最終段階、まさに佳境を迎えているところです。

補助金の獲得、配信会社との交渉、チラシ類のデザイン、各種告知活動等々、ここに至るまで本当にいろいろありましたが、どうにかこうにか、配信にまで漕ぎ着けられそうで、本当にありがたいことだと感謝しております。

それもこれも、本企画の実施をご快諾下さいさいましたピアニストの今井顕先生はじめ、音声・映像技術の木下淳様、ピアノ技術の久連松良澄様、収録にご協力いただいたピアニストの多胡央夏様のご尽力のおかげであり、この場を借りて厚く御礼申し上げたいと思います。

おかげさまで、皆さまに自信を持ってお届けできる充実の内容に仕上がってきていると思います。どうぞ、皆さま、楽しみに配信までお待ち下さいませ。それまでの間、収録風景をご紹介いたしますので、どうぞお楽しみ下さい。

さて、本日は、演奏会の開催に種々の困難が伴うようになってきた昨今、私も関与することになった「配信コンサート」というものの意義について、私自身の思うところを述べたく思います。

「配信コンサート?所詮生演奏の代替でしかないし、到底生演奏の魅力には叶わないよ、そんなことして意味ある?」

そんな声も聞こえてきそうですね。実際、私も、面と向かって言われたことがあります。さすがにそのときにはちょっと凹みました。

確かに、生演奏の魅力に勝るものはない、ということは、私自身も認めることです。「やっぱり生の演奏会はいいよね、だから、苦労したけれどやってよかったよね」ということがあってもいいとも思います。そのことを否定するつもりはないのです。私だって、そこは共感しています。

ただ、一方で、こういう視点もあってもいいのではないか、とも思うのです。とても、毒のある言い方かもしれませんが、あえて申し上げますね。

それは…。

演奏会に参加できるのは、最初から限られた「選ばれし者」だけであり、行きたくても行けない「排除された者」が世の中には存在しているということ。

残念ながら、現時点では、演奏会に出かけて行くことができるのは、少なくとも自ら感染していない確率が高い状況にある、または、身近に感染者がいない状況にある、あるいは、疑わしき症状がない、等々の条件が揃った者だけではないでしょうか。そういう人だけが、演奏会に参加することが許されているわけです。

しかも、昨日までこの「選ばれし者」だった方も、例えば、それこそPCR検査で陽性であることが判明した途端、あるいは、家族の感染が判明した途端、その人は、言うなれば「演奏会に行く資格を失う」というのが、今の悲しい現実だと思うのです。

もちろん、感染したら音楽どころではないのかもしれません。症状によっては、生死の境を彷徨う、それは筆舌に尽くしがたい苦しみだ、という話も聞きます。

でも、一方で、濃厚接触者ということで、自粛を余儀なくされているが、所在なく時を過ごす状況に置かれた方もいらっしゃるかもしれないですよね。

あるいは、新型コロナウイルスに感染しているわけではなくても、例えば喘息等で「咳症状のある人」も、今は演奏会場に出かけるのは困難なのではないでしょうか。

そこで、思うわけです。

こういった演奏会から締め出されてしまった人には、音楽を楽しむ権利はないのか? ― 違いますよね。

新型コロナウイルスに感染していても、あるいは、それ以外の傷病で病床にある方でも、音楽を楽しみたい思いを抱く方はいらっしゃるはずなのです。あるいは、ご高齢になって、以前はフットワーク軽く演奏会に行かれていたのに、それが出来なくなられた方も、決して少なくないでしょう。

そして、そういう方が音楽に接することで元気になっていただけるのであれば、生きる楽しみを得ていただけるのであれば、そういう方に音楽を届けることこそ、音楽家の使命のはずですよね。

実は、私がこういう思いを抱くのには、それなりにわけがあります。以前に、私どものブログでもご紹介しましたが、私が、ガラス扉を突き破って、大怪我をして入院していたとき、しばらくベッド上安静という入院生活を経験したことがあるからなのです。

当時、ベッド上から動くことができない私には、使用を許されたスマートフォンで、You Tube の演奏を聴くことぐらいしか、できることはありませんでした。そう、イヤホン越しにフォーレのノクターンの4番の演奏を聴きながら、いつかこの曲が弾けるようになるまで回復できるようになりたい、と思ったものです。まさに、インターネット動画音楽だけが私の慰めだったのでした。

その思い出があるからこそ、こうした「演奏会を楽しみたいのに、演奏会から締め出されてしまった人」にも、音楽を聴いていただく選択肢をお届けしたい、そう強く思うわけです。

さて、最後に少しだけ。私が今回このプロジェクトを進めるにあたって、常に念頭に置いてきたこと、それは以下の3項目が「かつ」条件で満たされることでした。

  • 視聴される方に、「今度は、ぜひこのアーティストのパフォーマンスを生で鑑賞したい」と思わせるものであること
  • 生の演奏会では得られない新たな価値を提供するものであること
  • 音楽を生業とするアーティストの持続可能な音楽活動の継続に資するものであること

この配信コンサートが、もしも、この3つの条件に適うものになるのであれば、私としてこれほど嬉しいことはありません。


◆ 配信コンサート 情報
お申込みはこちらから

https://w.pia.jp/t/imaiakira-pls/


《タイトル》
今井顕が語り、奏でるウィーン古典派の魅力
ハイドン、モーツァルト、そしてシューベルトの音楽を聴きくらべてみませんか?
《配信予定プログラム》
ハイドン ソナタ ニ長調 Hob.XVI:37
モーツァルト ロンド ニ長調 K.485
ハイドン 変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII:6
モーツァルト 幻想曲 ハ短調 K.475
シューベルト 楽興の時 D 780
《演奏》
今井 顕 (ピアノ)
《視聴チケット販売期間》
2021年1月30日(土)10:00 〜 2021年3月6日(土)21:59
《視聴可能期間》
2021年2月25日(木)10:00 〜 2021年3月6日(土)23:59
(期間中は何度でも視聴可能です)
《配信方法》
ぴあ|ライブ配信サービス「PIA LIVE STREAM」
視聴には視聴チケットが必要です(ぴあ所定の方法でお求めください)
《ぴあ視聴サイト》
https://w.pia.jp/t/imaiakira-pls/
(視聴お申込みサイト)
《公式特設サイト》
https://moments-musicaux-kyoto.com/lp/prof_akira_imai_concert_2021/