ブルクハルト コンサートベンチ
<ブルクハルト コンサートベンチ>(著者撮影)

ちょうど阪神・淡路大震災のあった年(1995年)、老朽化した西陣の自宅を建てなおすことになったのですが、設計図を見て「これならグランドピアノも置けるわね」という話題が家族の間でなされたことがきっかけで、「その次の瞬間からグランドピアノを買うことが私の中で既定事項になってしまった → 最終的にはレーニッシュというドイツ製のグランドピアノを買うことになってしまった」という一連の楽しい事件が起こったのであります。

そのときの一部始終を記した駄文は、東大ピアノの会のOB会報誌(「桃源」)にも掲載されました。ところが、奇妙なことに、その掲載が契機となって、その後マルク=アンドレ・アムラン(マルカンドレ・アムランと表記する方が正しいのでしょうか?)の2度目の来日公演(大阪公演)や、フランチェスコ・リベッタの来日リサイタル等々、数々の演奏会やそれらにまつわるちょっとした事件に関わることになってしまったわけです。関係者の方々にご迷惑がかかってはいけませんから、ここではそれらの事件については詳述いたしませんが、とにかく、私の場合、単に「グランドピアノを買っただけ」のはずが、それだけでは止まらず、次から次へと不思議な事件が連鎖反応的に起こってしまうようなのです。偶然が偶然を呼ぶのでしょうかね。

あれから20年あまり、さすがに過去の数々の事件の記憶も薄れつつあったのですが、今年(2017年)になって、以前の経過に勝るとも劣らないほど不思議な事件がまたぞろ次々と起こったのであります。これも、もとはといえば、単に「ピアノ用の椅子を買っただけ」のはずだったのですが、それだけに止まらず、あら不思議、「椅子」→「2台目のグランドピアノ」→「スタジオ」…という具合に雪だるま式に話が大きくなってしまいました。ということで、この一連の顛末を皆さまにご紹介することにいたしましょう。

まずは突然もたらされた「最高級の椅子」の物語から。今年(2017年)の1月の半ば頃だったと思いますが、自宅のピアノの調律に来ていただいている調律師さんに、演奏中の「ミシッ」「ギシッ」という軋み音が気になるので、最近流行りの油圧式ベンチをさがしている旨を伝えました。調律師さんがおっしゃるには「ちょっと心当たりがあるので、また連絡する」ということでしたので、お願いしておりましたところ、数日後にこんな電話が入りました。「実は、例の閉鎖する店舗で荷造りしている荷物の中に、最高級の油圧式コンサートベンチの新品があってね、これもらえる?と聞いてみたところ、東京の店舗に移動させるよりは売却した方がよいからということで、少しお得な条件で手に入りそうだけれどどうする?当初の予算より若干お高くなるけれど、ザ・シンフォニーホールにも入っているモデルだから、めちゃくちゃいいのは間違いないよ~」。

提案を受けたのは、ブルクハルトの最高級コンサート用ベンチの油圧式。おそらく、ピアノ椅子として販売されているものとしては、これ以上の価格はないだろうというシロモノ。もちろん、かなりお得な条件ではありましたが、それでも元値が「椅子ってこんなにお高いの?」というレベル。もうそれだけでびっくり仰天ではありましたが、これもご縁のものだし、何よりも私の直感が「これは幸運をもたらす吉兆に相違ない、買わなきゃ嘘!」とささやいたものですから、「気前よく即決」でいただくことにしました。こういうとき、私の理性というものは、いつも鳴りを潜めてしまうのです。

到着した椅子は、レザーを使用した高級感あふれるデザイン、座り心地は固すぎず柔らかすぎず、着座時の体幹の安定感も抜群、椅子の高低調整も従来の手回し式とは比べものにならないほどスムーズです。お尻に根が生えるかしら…。…ってことは、練習時間も増えて、少しは上手くなるかしらね…。そういえば、自宅にある(一台目の)グランドピアノも、搬入直前になって価格が一気に五十万円安くなったことがあったなぁ。少しあたたかくなる頃に、お友達でも呼んで、「椅子に座る会」でもしようかなぁ(→実際3月下旬に2日にわたって「椅子に座る会」を行いました)。久しぶりに、友人たちと、お菓子でもいただきながら、例によって「大音量会」するんだ~!!!年明け早々、幸運だわ!!!

この「椅子」事件は、しかし、これから起こることの序章でしかありませんでした。この後に続く事件に比べれば、まだまだかわいらしいものです。この続きは、また改めてご紹介することにいたしましょう。


こちらのコンサートベンチですが、当サロンの開設にあたって、自宅からこちらのスタジオに運び込むことになりました。

ご来場の際は、最高級ベンチの座り心地もぜひお確かめ下さい。