照明でこんな雰囲気にも
照明だけでも緊張感が高まることがあります

「リスクマネジメント」 ― 懐かしいです、この言葉。経営企画や監査関係の仕事をしていたときには、毎日がこの言葉とともにあったように思います。

リスクマネジメントの基本は、リスクアセスメント(特定・分析・評価等)とリスク対応(回避・低減・移転・保有等)ですね。

そして、大前提とすべきこと、それは「リスクはゼロにはならない」ということです。完璧主義に陥りやすい人は、「リスクをゼロにしたい」と思うようですが、これが諸悪の根源だったりするわけです。特に、外的な要因によって発生するリスクは、こちらではコントロールできないことだってありますからね。

さて、そんなリスクマネジメントの基本的な考え方、実は、今私が取り組んでいる「悩める演奏家向けの個別アシスト」(前回記事もご参照ください)を進めるうえでも、かなり参考になると思っています。

多くの演奏家は、例えば大きな舞台を目の前にして、言いようのない不安と緊張感に襲われます。特に、演奏前など、言い知れぬ恐怖感との戦いになります。

こういう不安や緊張感、周囲に相談すると「誰でも緊張はするものよ、これ、結局慣れるしかないのよ、場数踏むしかないのよね」という慰めの言葉が返ってくることが多いと思います。その通りです。まさにその通りではあるのですが、この慰めの言葉で事態が解決するでしょうか。多分「そうか、みんなそうなのか、私だけではないのか」と多少気が楽になるだけの話ではないでしょうか。

まず問題なのは、不安や緊張感を漠然としたものとしてとらえていることなのですね。人間正体がよく分からないものには、不安や恐怖を覚えたりするものです。

多くの演奏家の場合、度重なる「苦い経験」の蓄積の影響もあり、不安や緊張感は相当程度膨れ上がっています。ところが、これらを「緊張」という言葉で大括り化していることが多いように見受けられます。

ですから、まず「不安や緊張感の正体を明らかにしていく」ということを行うことが重要だと思います。これ、リスクアセスメントの考え方に通じるものがあると私は思います。私は、昔から「危険を危険と認識したとき、少し安全度が上がる」という実感を持っておりましたが、結局そういうことだと感じています。

実際には、不安や緊張感を構成する要素は複合的であることが多く、いろいろな要素が複雑にからみあっているように思われます。ここを解きほぐしていく作業がどうしても必要です。そして、一番重要視したいのは、不安や緊張のあり方は、微妙に人によって異なる、ということです。その方の性格、思考習慣、生育歴、これまでの経験、身体的特性等の影響を度外視できないからです。

そんなことを考えながら、日々模索しております!