事前テスト映像から
<コンクール規定にそった画角を意識した構図>

ここ一年ほど、弊スタジオで収録した動画をお作りするという映像作成のご依頼が増えました。主にコンクール用の審査動画の収録を中心に、相当沢山の収録を手がけることになりました。

こういった動画収録を行うようになったのは、実は、スタジオに時々いらっしゃるとあるピアニストさんのこんなお悩みの声に接したのがきっかけでした。

― 「コンクールの映像審査の講評で音質が良くないというコメントがあったが、どうしたらいいのだろう?」

この痛切なお嘆きに、何か私でお手伝いできることがあったら…という思いで始めたのが、「手ぶらで録画・録音」プランでした。

もともと録音スタジオとしても使っていただけたら、という思いで作ったスタジオでしたから、それなりの録音機材も備えておりました。また、私自身、音響に興味があって、大学(京都市立芸術大学)まで行って音響学の単位を取ったりしておりましたので、ある意味自然な流れだったのかもしれません。さらに、映像についても、もともとカメラ女子でしたから、比較的入って行きやすいところがありました。

これまでに多くのコンクール用の動画をお作りいたしましたが、中にはお作りした動画で優勝・入賞されたという嬉しいご報告をいただくことも。おかげさまで、ご利用いただく方も、小学校に上がられたばかりの方から、名だたる国際コンクールのコンペティターまで、幅広い層にわたるようになりました。

ご参考までに、最近お手伝いした主なコンクール等をご紹介しましょう。

  • ピティナ・ピアノコンペティション
  • 全日本学生音楽コンクール
  • ショパン国際ピアノコンクール in ASIA
  • ピティナ・ピアノ曲事典 オーディション
  • ベーテン音楽コンクール
  • 京都府吹奏楽連盟アンサンブルコンテスト
  • ヤマハジュニアピアノコンクール
  • 浜松国際ピアノコンクール  等々
  • さて。こうしたコンクール等審査用動画の収録をお手伝いするにあたっては、相当程度注意を払わなければなりません。繰り返し撮影ができるとはいえ、基本的に同じ演奏は二度できないわけですから、収録は毎回毎回が「本番」であり、実は緊張の連続なんですね。注意を払わなければならないことは山のようにあります。

    そこで、今日は、私が動画収録にあたって、心がけていることを少しご紹介してみたいと思います。


    【事前確認項目】

    動画のご依頼をいただくとき、事前に必ず次の点をご連絡いただくことにしております。

  • 対象となるコンクールとその動画審査規定
  • 演奏曲目および演奏時間
  • 提出スケジュール
  • 提出方法
  • 機材確認(動作確認その他)
  • 以下、注意すべきポイントを幾つかご紹介したいと思います。

    コンクールの動画規定については、必ず収録前にしっかりと熟読し、場合によっては私自身でその内容を読み込んで、事前にシミュレーションを兼ねてテストしてみる、ということも行っています。

    コンクールの場合、ミスタッチ等の編集が許されないのは、もちろん言うまでもないのですが、それ以外にも気を付けておかなければならないことは結構多いです。かつ、コンクールによって、微妙に規定が違っていることも多いです。

    ここで、私がこれまでに経験したコンクールによる規定の差異の事例をご紹介しましょう。

  • お辞儀の動作を収録する必要があるケースとないケース
  • ピアノソロの場合ペダル操作(足もと)までしっかり撮影することを要求されるケースと手もとと顔だけの画角でよいとされるケース
  • 複数の曲や楽章ごとに途切れ目なしで(カメラを止めずに)撮影しなければならないケースと別々に収録したものを結合するケース
  • いかがでしょう。結構、ルールが違っていることに驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、規定に反した映像は失格になりますから、このあたりは細心の注意が必要です。

    例えば、画角の要求事項は、場合によってはより適切な撮影機材の選択を迫られることもあります。広角になりすぎる機材、逆に広角で撮影できない機材等、実はいろいろです。単焦点レンズしかついていない機材の場合、求められる画角での撮影が困難になることもしばしばです。

    実は、私は、動画撮影をご依頼いただいた場合、事前に自分自身で撮影テストを行うようにしております。お恥ずかしい限りなのですが、そういった事前の撮影テストの映像をご紹介しておきます。これは、あるオーディションのご依頼に対応するために、確認用に作成したものです。画角、音量設定、マイク位置、採光、その他いろいろな条件を確認しております。もちろん、一旦試作してみたけれども、改善が必要だな、というケースもあります。そのような場合であっても、実際のご依頼の収録に入るまでに、何とか最適解を探すようにしておりますし、どういうご依頼であってもこういう作業は欠かせないと思っています。

    ところで、「途切れ目なしで(カメラを止めずに)収録」という要求事項に対応する場合、撮影モードにもよりますが、演奏時間がどの程度になるのか、十分確認しておく必要があります。機種や撮影モードによっては、いわゆる「2GB/4GBの壁」と呼ばれる事象ですが、ファイルが自動的に分割されて記録されてしまうことがあります。こうなると、収録時には「一続きに撮ったつもり」なのに、ファイルが分割されてしまうことにもなりかねません。機材毎にどのモードであれば、何分連続撮影が可能なのか、これは、事前にテストして確認しておかないと相当危険だと思います。

    ちなみに、私の場合は、「2GB/4GBの壁」対応として、少なくとも1台は、長時間連続撮影ができる 4K モードで撮影するようにしております。ただし、最終のファイルの仕上がり容量についても実は注意が必要で、先般実際にあった話ですが、映像審査での要求事項として、一続きの長時間撮影であるにもかかわらず、容量制限つきファイル(2GBまで)での提出が求められたこともありました。そのあたりの兼ね合いも事前に考えておく必要がありますね。

    なお、どんな収録の場合でも、機器トラブルに備えて、複数台稼働させておくこともとても重要なポイントです。お客さまにとっては、「この1回の演奏」がとても重要、だから、その演奏を逃さないための処置は必ず準備します。


    【案外ハードルの高い要求項目があることも…】

    音質・音量設定に関する規定は、比較的多くのコンクールで見られますが、中には、結構ハードルの高い要求項目があったりします。幾つかのコンクールの映像規定から、これは…と感じたものをピックアップしてみました。

  • 動画データ又はDVDの音質が悪いもの、映像が不明瞭なものは、審査にマイナスとなる場合がある。
  • ビデオカメラに音声ボリュームを自動的に調節する機能が付いている場合は、演奏の抑揚がなくなるため、使用しないこと。音量が極端に小さい、あるいは大きかったり、雑音が入ったりしてはならない。
  • コンクールによっては、動画の音画質は問わない、というものももちろんありますが、上述のような事例では、専門家に撮ってもらうか、それと同等程度の仕上がりを前提としなさい、という話もあるということなのです。一般家庭で雑音を入れないで録音するのはほぼ不可能ですし、外付けマイクを使った場合の電気的ノイズ等の対応は、相当の技術を要します。


    コロナ禍で、動画審査機会が増えましたが、おそらくアフター・コロナ時代になったとしても、一定程度映像・音源審査機会は残ることだろうと思います。また、映像・音声技術も日進月歩、そうした動向にも注意を払っていく必要がありそうです。