piano
<結局ピアノの演奏技術の習得は身体感覚の習得にほかなりません>

演奏家のためのメンタル・トレーニングができないか…。実は、この私、もう何年もの間、演奏家のためのメンタル・トレーニングの独自メソッドを確立して、それらをご提供したいと強く願ってまいりました。

演奏をする者なら誰もが経験する「人前で思うように演奏できない」ことへの不安や恐怖。おそらく、この悩みは、音楽を専門で学んだ方から初心者に至るまで、多かれ少なかれ存在するのではないかと思います。演奏家を襲うこうした不安や恐怖に対して、より合理的で有効な対処メソッドを提供できないだろうか…と。

さすがに、最近では、幾つかのメンタル・トレーニングの手法が知られるようになりました。例えば、スポーツ心理学といった分野においても、「実力発揮に影響を与える心理的な要因」や「練習を継続するためのモチベーションアップの心理的要因」等について、より科学的で実践的なアプローチがなされるようになってきています。演奏分野においても、幾つかのメンタル・トレーニングに関する知見が明らかになってきております。

そういう状況もあって、ここ3年ほどは、スポーツ心理学・音楽生理学・音楽心理学・心理カウンセリングその他周辺分野も含めていろいろと探索してまいりました。これら分野に関する各種知見は、どれもとても有用なものばかり。こうした先人の知恵を踏まえていくことは、やはりとても重要なことではないかと感じています。

ですが、それだけでは何かが足りない…。そう感じていたのもまた事実です。例えば、演奏家のメンタルトレーニングについての優れた書籍もいろいろ出回るようになりましたが、果たして、本を読むだけで問題は解決するのだろうか…と。

例えば、100メートルを9秒台で走るためのコツについて書かれた、極めて優れた良書があったとしましょう。そこに書かれたことは、まさにまさに極意であり、有益な内容に満ちていたとしましょう。でも、それを読みさえすればあなたは100メートルを9秒台で走ることはできますか?そうではないですよね?

演奏家が納得のいくパフォーマンスを実現するために必要なこと、これは、本を読んだだけで即刻出来るような話ではないかもしれない、ということに段々気が付くようになりました。そして、さらに模索を進めていく過程で、以下の点を確信したのです

    • 人間には個々人の気質や性格というものがあり、またこれまでの人生で身に着けてきた習慣や思考の癖というものが存在するため、教科書的な画一的手法でアプローチするには限界があるということ。
    • いわゆる「体得する」という言葉が端的に示すように、演奏実技においては、最終的に個々人が会得すべき身体感覚というものがあること。こういうものは、教科書を一読しただけで一朝一夕に身につくような類のものではなく、実践を伴いながらそれなりの時間をかけて個々人が見つけていくべき性格のものであること。
    • 表現するという活動には、自分自身の内部で「感じていることを表出する」プロセスが存在するが、「感じる」とはどういうことか、それらを「表出する」とはどういうことか、そこに存在する様々な葛藤とどうつきあい、折り合いをどうつけていくのか、ということについて真正面から向き合うことが重要であること。実は、ここを棚上げにしたまま、場数を増やそうと本番機会だけを重ねても、結局苦手意識が蓄積されるだけに終わってしまうことが多いこと。

そして、私は、一つの結論に至ったのです。おそらく、あらゆる教育の場面でいえることですが、その人その人の心と身体に合った才能開発の形があるはずで、それは結局のところ、個別アシスト手法でアプローチしていくことが最も有効なのではないだろうか、ということでした。なぜなら、性格、体質、気質、思考習慣は人それぞれだからです。かつ、問題解決に至る最終的な答えは、その人の心と身体の中にこそあるはずで、私自身は、それを見つけて磨き上げていくお手伝いをする立場に回りたい、そんな風に思うようになりました。

もちろん、人間の心のあり方には、それこそ心の一般原則のようなものが存在しますから、基本的にはその原則を踏まえておくことがとても重要です。ですが、実際の教育の場面では、もっともっと微妙な塩梅・匙加減が求められるのではないかと思っています。例えば、Aさんに有効なアドバイスが、Bさんにそのまま役立つとは限らないのです。例えば、ある人には「セルフイメージの変更」が有効かもしれないし、ある人には「準備スケジュールの見直し」が有効かもしれない。そこを丁寧に探りながら、その人に一番合ったレシピを探すお手伝いのようなことができないだろうか。

そんなことを考えて、ここ半年ほど、いろいろな教案を考案したりしておりましたが、この度、思い切って実践フェーズに入らせていただくことにしました。ずばり、個別相談を主体としたトレーニングです。完全予約のワンレッスン制です。ありがたいことに、既にご希望の方がいらっしゃったので、実際のレッスンを開始したところです。

さて、進めるにあたって、一つだけ私の中で決めていることがあります。それは…。

    • トレーニングの現場では、「ここなら何を話してもOK」「どう感じたとしてもOK」「どういう結果であったとしてもOK」という絶対的な安心感の存在が不可欠であること。

お気づきかもしれませんが、これ、ちょっとした心理カウンセリングの現場みたいだと思いませんか。実は、私自身、お世話になっているカウンセラーの先生について、長年カウンセリングを通して、実に多くのことを学びました。そこで得たことも沢山応用できる、と感じておりますし、これからは、過去に私がいただいたいろいろな学びの要素をほかの方々に還元させていただく番が来たと感じているのです。

なお、最後に、オプショナル・メニューについても言及しておきたいと思います。それは、「少し垢抜けた演奏をするための中級者向け演奏アドバイス」もご希望の方には実施したいと思っています。実は、ここ数年、私自身演奏技術の向上のために、それなりの教育機会を得てまいりました。多分、受けている教育水準だけなら、一流の内容ではないかと思っています。そして、その教育を受けた者の目で拝見していると、「ちょっとしたことを注意するだけで、随分演奏が垢抜けるのにな、残念だな」という事例に沢山遭遇するのですね。私自身、長年アマチュアで我流に近い状態で弾き続けていたこともあり、「残念な演奏を続けていたことがあるからこそ分かること」があるのです。そう、「残念な演奏からの脱却ポイント」についても、個人アシスト指導時に合わせてご提供できたら、と思っております。

今後は、演奏される全ての方のお悩みに寄りそえる存在でありたい、それを目標に今後なお一層努力してまいりたいと思っております。

ご興味がおありでしたら、ぜひ個別にお知らせくださいませ。