<新緑の御霊(上御霊)神社>(著者撮影)
<新緑の御霊(上御霊)神社>(著者撮影)

お知らせでも告知しましたが、先般「ミューズの微笑み」(標準文字)について商標登録出願をいたしました。「え?こんなスタジオ名でも商標登録するものなの?」とお思いの方も多いかもしれませんが、商標権に対して無為無策であることほど危険なことはありません。法の世界では、よく知られた格言として、「権利の上に眠るものは保護に値せず」というものがあります。通常、この格言は消滅時効制度についての説明に使われることが多いようですが、商標権のような知的財産権についても、権利保護のあり方について一定のルールが存在する以上、この格言にみられる精神、すなわち「権利は正しく行使してこそ守られる」という点を無視することはできません。

話はそれますが、債権法改正で消滅時効制度は大きく変わるとされています。確かに、これまでの消滅時効制度には「???」というところが多かったですからねぇ。とはいっても、消滅時効制度自体がなくなるわけではありません。

さて、話を商標権に戻しましょう。商標権をめぐるトラブルの事例は、枚挙にいとまがありません。よく知られた例としては、ロールケーキで有名な大阪の会社が、神戸の有名洋菓子メーカーによって、商標の使用差止め及び損害賠償を請求されたものがあります(詳細は大阪地判平成23年6月30日判時2139号92頁等)。確か、係属中にその大阪の会社は店舗名および商号を変更したはずです。このように、他人の商標権を侵害したとして、使用差し止めや損害賠償請求を請求される可能性があるということが大変恐ろしいのです。

以前の記事でご紹介した通り、こちらのピアノサロンの名称は、御霊神社(上御霊神社)の宮司さまからいただいたものです。「使用差し止めやといわはりますけどな、上御霊さんからいただいたお名前にケチなんぞつけはったら、バチ当たりますえ~。ご祭神は早良親王(崇道天皇)はじめ…」などとと居直ることはできるかもしれませんが(これはこれでコワいかも…ですが!!!)、やはり現代の日本社会において、そんな脅しだけでは通じないことは明らかです。

日本の商標権の場合、先使用主義ではなく先願主義ですから、もうこれは早々に出願しなければならないわけですね。実のところ、宮司さんからお名前をいただいてすぐに、私は、商標検索画面で先行権利者が存在しないかどうか、真っ先に確認しましたからね。いただいた大切なお名前だからこそ、長く大切に使えるようにするために、権利をしっかり守っていかなければならない、そのためにはまずは商標登録出願が必要だと思い、商標専門の弁理士さんをご紹介いただき、手続きを進めることにしたのでした。ご尽力いただきました方々には、本当にお世話になりましてありがとうございました。登録まで引き続きよろしくお願い申し上げます。

さて、この商標権、指定商品または指定役務の範囲において独占排他的に権利者だけが使用できる権利であることはもちろん、同一商標だけではなく類似商標にまで権利範囲が及ぶことも考えると、相当に「強い権利」であります。そんな「強い権利」だからこそ、商品やサービスに対して信用力を付与するためには欠かせない知的財産権であるともいえるでしょう。とりもなおさず、「強い権利」を保有するということは、商品やサービスの提供者にはそれだけ努力が求められるということでもあります。

出願してみて実感しているのは、いただいたお名前だからこそ、大切にしたい、という強い思い、そして、名を重んじるということは、その名に恥じないものを提供しなければならない、ということでもありますね。本当に身の引き締まる思いがします。

そういえば、大手家電メーカーのP社は、Nで始まる商標について、今でもその商標権を保持しているのだそうです。というのも、仮にNで始まる商標の権利を放棄してしまった場合、第三者がNで始まる商標を使って粗悪なものでも作るようなってことがあってはそれこそ一大事、そんなことがあっては歴史ある会社の信用を傷つけかねない、だからこそ商標権の保持が必要だ、という事情なのだそうです。とても大事なことですね。

そうそう、知的財産権といえば、音楽関係で関わっていく以上、商標権のみならず著作権についても、しっかり学んでいく必要がありますね。先日、親しくしている女性の弁理士さんに、「音楽著作権について、またいろいろ教えてね~」と話したところ、中山信弘先生の分厚い本を手渡され、「はい、これ貸してあげるから、しっかり読んで、私にちゃんと説明してよね~」と言われてしまいました。そんな、プロの弁理士さんにお教えすることなんてございませんがな…とは思いますが、でも、これからは「著作権については素人だから」という言い訳は許されない、ということでもあるのですよね。

皮肉なことに、分厚い法律の本から逃れることは、案外難しいらしいです。苦笑を禁じえません(こちらをご覧下さいませ…笑)。